
この記事を書いた人
氏名:延廣学(のぶひろまなぶ)
役職:管理本部 品質管理室 課長
資格:NACE COARTING INSPECTOR L-2、ISO9001:2015 管理責任者、化学物質管理責任者
製造業において、表面処理技術は製品の品質を向上させるために欠かせない大切な技術です。この記事では、表面処理についての基本情報から最新の技術まで、幅広く説明します。
目次
表面処理の基礎知識
表面処理とは
表面処理とは、製品の表面に特殊な加工を施すことで、その性能や外観を向上させる技術のことです。
例えば、金属製品にさびにくい膜を形成したり、プラスチック製品に傷がつきにくい加工を施したりすることが表面処理に当たります。
この技術は、製品の寿命を延ばしたり、新たな機能を付加したりする上で非常に重要な役割を果たしています。
表面処理の歴史
表面処理は、古くから現代まで活用されてきた技術です。
ここで、ニホンケミカルの歴史を見ていきましょう。
ニホンケミカルは1967年に広島県尾道市で創業し、船舶・機器・配管・タンク等のケミカルクリーニング及びオイルフラッシングを行いました。
その後、酸洗工場の建設、ショットブラスト及び塗装工事の開始など、事業を拡大してきました。1977年には株式会社ニホンケミカルを設立し、金属の表面処理・塗装・加工で国内トップの実績を持つまでに成長しました。
現在では全国7工場を展開する規模となり、これまでに蓄積してきた金属加工の技術力で、今日も日本のものづくりを支えています。
これからも新たな「こんなこと出来ない?」という課題に挑戦し続け、お客様のニーズに応えていきます。
表面処理の種類と特長
表面処理には様々な種類があります。ここでは代表的な種類について目的と特徴、例を紹介します。
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めっき(メッキ)
- 目的:耐食性や電気伝導性の向上、装飾性の付与
- 特長:金属表面に別の金属をコーティング
- 例:金メッキ、銀メッキ、クロムメッキ
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陽極酸化(アルマイト)
- 目的:耐食性、装飾性、硬度の向上
- 特長:主にアルミニウムに適用、表面に酸化皮膜を形成
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化成処理
- 目的:耐食性の強化、塗料との親和性向上
- 特長:金属表面に処理剤を塗布し、化学反応を起こす
- 例:クロメート処理、リン酸被膜処理
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溶射
- 目的:耐摩耗性、耐食性、耐熱性の向上
- 特長:溶融または近い状態の材料を吹き付けて皮膜を形成
- 適用:大型構造物にも可能
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塗装
- 目的:防食、防錆、装飾性の向上
- 特長:塗料を表面に塗布し、耐候性や美観を向上
- 例:ウレタン塗装、エポキシ樹脂塗装
このほかにもフッ素樹脂コーティングなど、さまざまな表面処理の種類があります。
ショットブラストの活用と効果
ニホンケミカルが手掛けるショットブラストは、金属加工業界で広く活用される重要な表面処理技術の一つです。
この技術は、高速で投射される微小な粒子(ショット)を用いて、製品表面を加工する方法です。
ショットブラストを施すことで、製品表面のスケール、錆、油汚れなどを効果的に除去します。これにより、製品の外観が向上するだけでなく、アンカーパターンと呼ばれる小さな凹凸を付けることにより塗装やコーティングの密着性も大幅に改善されます。
これにより、製造プロセス全体の効率化とコスト削減が可能になります。
従来の化学的表面処理方法と比較して、ショットブラストは環境負荷が低い処理方法です。投射材を再利用できるため、廃棄物の削減にも貢献します。
ショットブラストは、自動車、航空宇宙、建設、電子機器など、様々な産業分野で広く活用されています。製品の品質向上、コスト削減、環境負荷の低減など、多面的な効果をもたらします。
ニホンケミカルでは 、全国7工場 (9生産ライン) を保有しています。薄物 (厚さ2.3mm) から大型(高さ1,000mm) のものまで、さまざまな大きさの鋼材や、異型の鋼材も高精度に表面処理することができる生産ライン、機械設備を備えております。
表面処理の選定のコツ
表面処理の選定ポイント
金属の表面処理を行う際の選定ポイントを材料や性能、コストの観点でまとめています。
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材料特性
処理対象の金属の種類や性質に適した処理方法を選択します。
例:鉄は錆びやすいため防錆処理が必要、アルミニウムは自然酸化膜ができるため異なるアプローチが必要
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要求性能
製品に求められる特性(耐摩耗性、耐食性、導電性など)に合わせて処理方法を選択します。
例:切削工具には耐摩耗性の高いコーティングが適している
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使用環境
温度、湿度、化学物質との接触など、製品が使用される環境条件を考慮します。
例:高温環境で使用される部品にはセラミックコーティングが適している
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コストと効果のバランス
初期投資コスト、運用コスト、期待される性能向上や生産性向上のバランスを考慮します。
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生産規模と設備
多品種少量生産か大量生産かによって、適した処理方法や設備が異なります。
環境に配慮した表面処理技術
環境負荷の低減は現代の製造業における重要な課題です。従来の表面処理技術の中には、有害物質を使用するものや多量のエネルギーを消費するものがありましたが、最近では環境に配慮した新技術が開発されています。例えば、クロムめっきの代替技術として、環境負荷の低い三価クロムめっきや無電解ニッケルめっきの採用が進んでいます。また、水溶性の塗料や粉体塗装技術の発展により、VOC(揮発性有機化合物)の排出削減が実現しています。
コストと効果のバランス
表面処理技術の選択においては、コストと効果のバランスを慎重に検討する必要があります。高価な処理でも、製品の寿命が大幅に延びたり、メンテナンス頻度が減少したりする場合は、長期的にはコスト削減につながる可能性があります。一方で、過剰な性能を求めすぎると、不必要なコスト増加を招くおそれもあります。製品の要求性能、使用環境、生産量、市場価格などを総合的に考慮し、最適な表面処理技術を選択することが重要です。
表面処理の重要性
耐久性の向上
適切な表面処理を施すことで、製品の耐久性を大幅に向上させることができます。例えば、金属部品に耐摩耗性コーティングを施すことで、摩擦による劣化を抑制し、部品の寿命を延ばすことができます。また、耐食性処理を施すことで、腐食による劣化を防ぎ、過酷な環境下でも長期間使用できるようになります。これにより、製品の信頼性が向上し、顧客満足度の向上にもつながります。
長期的に見た製品コストの削減
表面処理は初期コストを増加させる要因となりますが、長期的には製品のコスト削減につながる可能性があります。例えば、耐摩耗性コーティングを施すことで部品の交換頻度が減少し、メンテナンスコストを抑えることができます。また、耐食性処理により製品の寿命が延びれば、製品の交換サイクルが長くなり、長期的に見た製品コストの削減につながります。ただし、コストと効果のバランスを慎重に検討する必要があります。
品質の向上
表面処理は製品の品質を大きく左右する要素の一つです。適切な表面処理を施すことで、製品の性能や耐久性が向上し、不良品の発生率を低減することができます。例えば、電子部品の接点に金めっきを施すことで、導電性と耐食性が向上し、長期的な信頼性が確保されます。品質管理の観点からは、表面処理の工程管理も重要です。処理条件の最適化や定期的な品質チェックを行うことで、安定した品質の製品を提供することができます。
生産性の向上
最新の表面処理技術を導入することで、生産性の向上が期待できます。例えば、従来の湿式めっきに代わる乾式めっき技術を導入することで、処理時間の短縮や環境負荷の低減が可能になります。また、IoTやAIを活用した表面処理プロセスの最適化により、品質の安定化と生産効率の向上を同時に実現できます。さらに、自動化された表面処理ラインを導入することで、人手不足の解消や作業者の負担軽減にもつながります。
金属加工における表面処理の事例
機械部品への表面処理活用事例
機械部品の分野では、耐摩耗性や潤滑性の向上を目的とした表面処理が多く活用されています。例えば、ベアリングや歯車などの摺動(しゅうどう)部品に硬質クロムめっきやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施すことで、摩擦係数を低減し、部品の寿命を大幅に延ばすことができます。また、油圧機器の部品にはフッ素樹脂コーティングを施すことで、潤滑性と耐食性を向上させ、機器の性能と信頼性を高めることができます。
自動車部品への表面処理活用事例
自動車産業では、軽量化と高性能化の両立を目指して、様々な表面処理技術が活用されています。例えば、エンジン部品には耐熱性と耐摩耗性を向上させるためのセラミックコーティングが施されています。また、車体の防錆処理として亜鉛めっきや電着塗装が広く用いられており、これにより車体の耐久性が大幅に向上しています。最近では、燃料電池車の部品に特殊な表面処理を施すことで、水素の透過を防ぎ、安全性を高める取り組みも行われています。
建設用資材への表面処理活用事例
建設用資材の分野では、耐候性や耐食性の向上を目的とした表面処理が重要な役割を果たしています。例えば、鉄骨構造物には溶融亜鉛めっきを施すことで、長期間にわたる防錆効果が得られます。また、外装材には耐候性塗装や陽極酸化処理を施すことで、美観を保ちながら耐久性を向上させることができます。最近では、自己洗浄機能を持つ光触媒コーティングを建材に施すことで、メンテナンス頻度の低減と環境負荷の軽減を図る取り組みも増えています。
電子機器分野への表面処理活用事例
電子機器分野では、微細な部品の保護や機能性の付与を目的とした表面処理が多く活用されています。例えば、プリント基板には半田付け性を向上させるためのOSP(有機半田保護)処理が施されています。また、スマートフォンの筐体には耐指紋性や耐傷性を向上させるための特殊コーティングが施されています。さらに、センサーデバイスには特定の波長の光を透過または反射させるための光学薄膜コーティングが用いられており、これにより高精度な計測が可能になっています。
航空宇宙産業への表面処理活用事例
航空宇宙産業では、極限環境下での性能維持が求められるため、高度な表面処理技術が活用されています。例えば、ジェットエンジンのタービンブレードには耐熱性と耐酸化性を向上させるためのセラミックコーティングが施されています。また、機体外板には耐食性と耐摩耗性を向上させるためのアルミニウム陽極酸化処理が施されています。さらに、人工衛星の太陽電池パネルには宇宙空間での劣化を防ぐための特殊な保護膜コーティングが用いられています。これらの表面処理技術により、過酷な環境下でも安定した性能を発揮することが可能になっています。
表面処理の可能性
金属加工業界における表面処理の最新動向
金属加工業界では、より高機能で環境に優しい表面処理技術の開発が進んでいます。例えば、従来のクロムめっきに代わる三価クロムめっきや無電解ニッケルめっきの採用が増えています。これらは環境負荷が低く、なおかつ優れた性能を発揮します。
また、IoTやAIを活用した表面処理プロセスの最適化も進んでおり、品質の安定化と生産性の向上が同時に実現されつつあります。
技術革新を可能にする表面処理
表面処理技術の進化は、新たな製品開発や技術革新を可能にします。例えば、ナノテクノロジーを活用した超薄膜コーティングにより、従来の単層膜と比較して耐摩耗性が5倍以上向上した事例があります。また、特殊な表面処理を施すことで、従来は不可能だった材料の組み合わせや加工方法が実現可能になることもあります。さらに、表面処理技術の進化により、製品の小型化や軽量化、高機能化が進み、新たな市場の創出にもつながっています。
まとめ
表面処理技術は日々進化しており、製造業の競争力向上に大きく貢献しています。
自社製品に最適な表面処理を選択し、適用することで、製品の性能向上や差別化が図れます。また、環境に配慮した技術を採用することで、社会的責任を果たしながら、ビジネスチャンスを広げることができます。表面処理は、製品の「顔」であり「鎧」でもあります。適切な表面処理を施すことで、製品の価値を高め、お客様の信頼を獲得することができるのです。ぜひ、自社製品に最適な表面処理を検討し、製品の競争力向上に活かしてください。
高品質なショットブラスト加工技術はもちろん、
それぞれに特徴を持った全国7工場(9生産ライン)で輸送コスト低減・短納期を実現します!


ショットブラスト加工や塗装についてお悩みの皆さま、思い立った時に気軽に相談できる先はありますか?
「まず、誰に相談したら良いのだろう…」
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そんな時こそ、お気軽にご相談いただけるように、ニホンケミカルではショットブラスト加工や塗装に関する無料相談を実施しています。